エラスティックな(伸縮自在の)マップ
フォーカス+コンテキスト型マップ
フォーカス+コンテキスト+グルー型マップ
Emmaのマップ操作
従来のfisheye (魚眼レンズのメタファ)
Emma
我々は,頭の中の地理的イメージ(認知地図)に近いマップを提供することが重要だと考えました.このため,フォーカスとコンテキストをそれぞれ一様な縮尺で描画し,これら二つの間に歪を吸収するグルーと呼ぶ領域を導入したモデルを提案しました.このモデルに基づくマップをエラスティックモバイルマップEmma(エマ)と呼んでいます.Emmaでは,右の図のように,フォーカスとコンテキストを歪なく描画し,両者を結ぶ道路や鉄道をグルーに選択的に描画しています.これにより,視認性を向上させ,認知地図に近づけるようにしています.
fisheyeモデルは,フォーカス+コンテキスト技術とも呼ばれ,ファーナスの提案以来,種々の拡張がなされて,様々な分野への適用法が検討されています.右の図は,中心からの距離に応じて縮尺を段階的に変化させて地図データを描画したものです.
この図から,中心付近の様子を詳細に知ることができます.しかし,同時に,歪のため駅が曲がったり道路が並行でなくなるなど,表示と頭の中のイメージが異なる場合が生じます.
地図を眺めているときに,ゴムのシートのように好きな場所を拡げて表示を細かくすることができると,広い地域の一覧性を保ちながら注目地域の視認性を向上させることができるようになります.我々は,このような伸縮できる地図をエラスティックマップと呼んでいます.全体の概略と一部の局所的詳細を同時に提示する方法は,fisheyeと呼ばれ,1986年にファーナス(George W. Furnas)により最初に提案されました.
Emmaでは,スクロール,ズームイン,ズームアウトなどの従来のマップ操作機能に加えて,以下のような認知地図に従って操作する機能を提供します.
●注目(focus)操作:拡大
・ 注目地点から,その地点の建物などの地図要素の意味的関係を用いて注目地域を求める.
・ 注目地域のスケールを拡大して詳細化する
・ グルーエリアを作成する
●手繰り寄せ(pull)操作:探索
・ マップ外のランドマークを探索してマップ内に引き込む
・探索結果が1つのマップに収まるように縮尺を定める
●畳み込み(fold)操作:抽象化
・密集したランドマークを抽象度の高い図式にまとめる
・通りのイメージ,街区のイメージを描画する
Emmaのグルーエリアは描画時に道路の位置などを縮尺変化に応じて計算して決定します.しかし,フォーカスとコンテキストの縮尺はそれぞれ一様であるため,事前に複数の縮尺の地図を用意しておくことが可能です.このようにすると,Emmaの描画時にフォーカスとコンテキストの地図を切り出して合成し,その間にグルーを描画すれば良くなります.これにより高速化が可能になります.また,フォーカスとコンテキストが普段使っている地図と同じになるため,頭の中のイメージにしたがってEmmaを探索することも容易になると期待できます.
名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻の高橋・片山研究室では,Emmaのコンセプトを提案し,実現技術の研究を進めています.また,(株)アルプス社との共同研究(ALPSLAB joint) により,フォーカス+コンテキスト+グルー型マップ生成システム Fish-Eye(フィッシュアイ) を開発しました.このシステムは,Emma技術と(株)アルプス社ALPSLABの地図作成・配信技術を融合させて,Emmaの基本機能を実現し,インターネットのマップサーバとして利用可能にしたものです.
このシステムでは,指定された地点を中心とした円形のフォーカスエリアをもつマップを作ります.右図のように,アルプス社の地図のテイストを保ちながらフォーカス+コンテキスト+グルー型マップを提供します.
アルプス社 ALPSLAB joint の「Fish-Eye」のサイトで公開していますので,Emma技術の一端を体験して下さい.
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