時空間コンピューティング・グループの研究紹介
研究成果
研究内容
本研究グループでは,次の4つの研究を行ってます.
私たちは,伸縮自在の地図(エラスティックマップ)が,北斎の絵図のような地図を作 り出す第一歩になるのではないかと考えました.エラスティックマップでは,1枚の地図画 面の中で,全体を眺めながら興味ある所を広げて詳細にしたり,画面の外側から興味ある 所を手繰り寄せて画面に加えたりできるようにします.これにより,一覧性に優れ,かつ 興味ある所の周辺が詳細で分かり易く描かれた地図を作れるようにします.1枚の地図の 中に広がった部分と縮まった部分ができるので,距離に関しては地図の正確さは失われて しまいますが,表示を工夫することにより一覧性と視認性に優れた地図を作り出せるので はないかと考えています.
本研究では,具体的に,数値地図を建物や道路などの基本的なオブジェクトに 分解し,ユーザの利用目的や興味対象等に応じてそれらを再合成する システムの実現を進めていま す.
提案システムの主要な特徴は次の 2点にあります.
本プロジェクトでは検索対象データの配置された時刻や場所に基づいた検索方式 を実現に当り,机の上に積み上げられていく書類の時刻や場所に基づいて書類を 探すことを目的とした情報検索システムに関する研究を行います.
このシステムの実現によって例えば次のようなことが実現できると考えています.
テーマ:
(2.1) 4Dデスクトップ・システムの研究
本研究ではコンピュータ・システムにおいて4Dデスクトップを実現することを
目的とします.具体的には机につまれた書類の変化をコンピュータ・システム
で扱うためのモデリング手法,ならびに,机の上の書類の変化をTVカメラによ
って自動的に収集しコンピュータ・システムに格納するための方式について研
究します.
現在,時空間上の事物の変化をコンピュータ・システムで扱うための方法は確
立されておらず,4Dデスクトップに関する研究はそのような時空間上の物の変
化をコンピュータ・システムで扱うための基盤研究として位置づけられます.
本研究では具体的に次の課題を対象とします.
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4Dデスクトップ・システムの構成図 | 内容に基づく実オブジェクトの配置位置検索システム |
(2.2) 机の上の書類に関する時空間的検索方式に関する研究
時空間上では重なっていない事物群も,ある角度から見たときは重なっているように
見えるということが一般的であるように,時空間上の事物間の重複関係(重なって見
えるかどうかを表す事物間の関係)は視点に応じて本質的にダイナミックに変化する
のが一般的です.
しかし,従来の時空間データ検索方式は検索対象となる時空間を固定し,その上の事
物間の重複関係に基づいた検索方式として位置づけられ,4Dデスクトップの要求を十
分に満たしているとは言えません.
そこで本研究では,時空間そのものの回転・遠近感を考慮した時空間データ検索方式 を実現する.ここで時空間そのものの回転は利用者の検索文脈に対応するので,「文 脈認識を伴う時空間的検索方式」の研究として位置づけられます.
本研究では具体的に次の課題を対象とします.
(2.3) 4Dデスクトップ・メタファによるデータ検索(利用者は机の上につまれたものから
欲しいものを探す感覚で情報検索すること)手法に関する研究
4Dデスクトップは机の上の物探し感覚でデータ検索を行うことを可能にします.ここで
は,この4Dデスクトップの特徴を一般の情報検索インタフェースに適用するための方法
に関する研究を行います.具体的には,インターネットなどの広域ネットワーク上に分
散配置されているデータベース群に対する検索・統合を4Dデスクトップ上の操作によっ
て行うための方法に関する研究を行います.
(2.4) 4Dデスクトップ・サマリ生成に関する研究
ある所有者の4Dデスクトップに対して,その所有者と異なる探索者に書類を探して
もらう場合,探索者に所有者の書類の配置傾向などを与えることによって迅速な検
索が達成されると考えられます.ここでは4Dデスクトップに関する書類の配置履歴
や操作履歴に対するデータマイニングを行うことによって,所有者の傾向の抽出や
4Dデスクトップのサマリを生成するための方式に関する研究を行います.
本研究で実現するシステムによって,例えば,車椅子での移動に対する ナビゲーションでは,下図に示すように,道路を移動中は,市町村等が提供する 市街地のバリアフリーマップを使って案内し, 建物に入ると,その建物の管理者が提供する 詳細なフロアマップを使って目的の部屋に案内する, さらに,部屋の中では部屋の間取り図に従って案内することが可能になります. このような活動の場に境目のない拡張現実感アプリケーション が実現されると,福祉をはじめ,災害時の救済,情報弱者のためのサイバー 世界の操作インタフェースなど,現在,社会的に重要とされている種々の ツール群を提供することが可能になります.
拡張現実感アプリケーションの例: 車椅子での移動に対するナビゲーション |
本研究の目的は,このような位置情報処理において,複数の異種位置センサと
多様な地図を要する場合でも,位置情報に基づく拡張現実感アプリケーション
の開発が容易になるような基盤ソフトウェアの構成法を提示するすることです.
具体的には,次の機能を実現し評価することによって,標準空間を介して異種位置
センサと多様な地図を有機的に結合した位置情報処理方式を明らかにします.
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屋外用位置取得センサ(GPS) | 屋内用位置取得センサ(手押し車) |
日常生活において,人が物を探す場合には,その物についての内容だけでなく,「物 をどこに置いた,物をいつ置いた,その人が何々をしているときにどこそこに置いた」 などのように,探す対象についての時空間上の位置や時刻からその対象を探すことが 非常に多いです.しかし,現在のコンピュータ・ネットワーク上に蓄積されたドキュメン ト・データに対する主要な検索機能としてドキュメント・データの内容に関する検索 機能(Googleに代表される主要なサーチエンジンは皆この機能を持つドキュメント・ データ検索システムとして実現されている.)のみが実現されているに過ぎません. 本研究は,現在実現されていないドキュメント・データに含まれる時空間表現を対象と してドキュメント・データを検索するためのシステムの実現を目指しています.
本研究で実現するシステムの特徴は,ドキュメント・データに高い適用性を有する 時空間的関連性評価機能(2つの時間表現が未来・過去にあるかどうか,2つの空 間表現が重なっているか,500メートル以内にあるかなどの関連性を求めるた めの機能)[1,2]を実現し,その機能をもちいてドキュメント・データ群を検索するた めのメカニズムを実現することにあります.
従来の時空間的等価性評価方式は,緯度経度などの座標表現を検索対象としてい ました. しかし,ドキュメント・データに含まれる時空間表現は前置詞などの時空間上 の位置を特定するための言語表現と地名などの緯度経度で表現可能な言語表現 から構成されています. 我々は,この表現を等価な座標表現に置き換えることが困難であること (すなわち,従来方式には適用できないこと)に着目し,そのような時 空間表現を対象とした時空間的等価性評価方式を実現しました. この方式は,従来方式と比較してドキュメント・データに対する適用性が 高いので,ドキュメント・データに含まれる座標表現に従来方式を適用す る方式と比較して本研究で実現するドキュメント・データ検索システムの 検索精度が高くなることが期待できます.