ユビキタス・コンピューティング研究グループ

ユビキタス・コンピューティング研究グループでは, 家庭内に遍在する情報家電機器などのコンピューティングパワーを利用し,より便利で快適な生活支援アプリケーションの開発に取り組んでいます.

SIRECSについて

本研究グループでは,ユビキタス・コンピューティング・システムの ひとつの姿として, 「状況認識型家電制御システム〜SIRECS〜」の開発を行っています.

SIRECS (Situation Recoginizing Electric-home-appliances Control System) の開発目的は,「いつでもどこからでも家電を自由に制御する」ことです. 2006年1月末現在,インターネットを経由しての家電制御システム (ex. FII-RII(NTT,タカラ), MARON(富士通)など)や, 家電同士をネットワークでつなぐための規格 (Jini(Sun), UPnP(Microsoft), HAVi(家電メーカ)など) がいくつか提案,実用化されています. しかし,それらには主に以下のような問題点があります. [家電制御ロボット FII-RII]

本研究グループでは,上記のような問題を解決すべく, 以下のような特徴を持った家電制御システムを実現することを目標にしています.

SIRECSの全体構成は,以下の図のようになっています.
[SIRECS全体構成図]
図:SIRECSの全体構成図

SIRECSは,具体的に以下の6つの要素技術から構成されています.

  1. 家電制御システムの制御コマンドセットに関する研究
  2. 状況認識型家電制御のための家電仮想化方式に関する研究
  3. 赤外線による家電制御システムの設計と実現方式に関する研究
  4. 番組データベース登録システムに関する研究
  5. 家電制御システムへのSet & play機能に関する研究
  6. ユーザー認識機能を有する家電制御システムに関する研究
  7. 家電制御ユーザインターフェイスに関する研究

それぞれについての詳細は,以下をご覧ください. 上記の項目からリンクをたどることもできます.

1. 家電制御システムの制御コマンドセットに関する研究

現状での家電制御システムは,独自のコマンド体系を持ち, 利用するシステムによって利用するコマンドを変更する必要があります. SIRECSでは,このような問題を解決するために, 家電制御システム向けの家電制御コマンド「VEHAコマンド」を設計, 実装しています. VEHAコマンドを家電制御コマンドとして採用したシステムであれば, VEHAコマンドを利用したユーザインターフェイスを設計するだけで どのシステムでも利用できるようになります.

本研究グループで提案しているVEHAコマンドは, リモコンのボタンを押すような感覚で家電制御プログラムを 記述することが可能になっています. そのため, ユーザインターフェイスや実際に家電を制御する部分の開発者にとっても, 直感的でわかりやすいコマンド体系となっています.

現在,VEHAコマンドは,ビデオおよびテレビを制御対象とした コマンドセットして設計されています. 今後はそれらのみでなく,エアコン,電灯,洗濯機等, あらゆる家電制御に対応したコマンドに拡張していきます.

2. 家電仮想化方式に関する研究

状況認識型家電制御システムを実現するためには, システムが家電の状況を常に把握しておく必要があります. そうして初めてシステムは 「今ビデオは再生中なので,録画予約は再生が終わってからビデオに送ろう」 という判断が可能になります.

[仮想家電構成図]

家電の状況を把握する方法にはいくつかあるでしょう. 本研究グループでは, 制御対象家電をシステム内でシミュレートすることにより, 常に家電の状況をトレースする方法で目的を実現しました. この家電シミュレータ部分は, 「仮想化家電」と呼び, 実際に存在する家電機器の状態遷移をシミュレートすることが可能になっています. システム内に仮想化家電を用意することによって得られた特徴は, 以下のようなものがあります.

本研究での仮想家電は,VEHAコマンドによって制御されます. つまり,ユーザからの要求など,外部からの命令はすべてVEHAコマンドとして 仮想家電に入力されます. その結果,仮想家電は入力に応じた処理(状態遷移等)を行い, その結果をさらにVEHAコマンドとして外部へ出力します. VEHAコマンドを採用することにより, おなじくVEHAコマンドを採用したユーザインターフェイスシステムや 家電制御のための外部モジュールなどを柔軟に選択でき, 拡張性も確保することが可能になっています.

上の図が,仮想家電の構成図です.外部からVEHAコマンドを受け取り, 状態遷移データを参照して, 現在の仮想家電の状態(仮想家電保持部)と VEHAコマンドから次の状態への遷移, あるい/さらには外部へのVEHAコマンドの出力を行います.

現在,仮想家電としてはビデオ(VV)およびテレビ(VTV)を実装しています. 今後,これらのみに限らず,あらゆる家電について仮想家電を実装していきます.

3. 赤外線による家電制御システムに関する研究

家電を制御する方法にはいくつかあります.

  1. 家電機器についているスイッチ類を直接操作
  2. 家電機器に付属のリモコン(無線式)を使用して操作
  3. BlueToothなど無線ネットワーク対応機器については, それを用いて操作 など

1.については,ネットワーク経由でこの方法を利用しようとすると, ロボットなどが必要になります. 3.の場合は,それに対応した家電を購入する必要があります.

本研究グループでは, 多くの家電で採用されている「赤外線による無線リモコン」 をターゲットにしました. つまり,家電制御システム自身に,赤外線の送受信部を設け, それを通してユーザからの入力,家電の制御を実現しています. 赤外線を利用したことにより,既存の家電になんら変更を加えることなく, ネットワークからの操作や家電同士の連携が可能になります.

本システムは, 家電制御システムを中心として入力側と出力側に大きく分かれており, 具体的には,以下の図のような構成になっています.

[赤外線による家電制御部構成図]
図:赤外線による家電制御システムの構成図

本システムは,本研究グループが提案している家電制御コマンドである VEHAコマンドを採用しています. 構成図からもわかるとおり,入力側ではユーザが利用している 赤外線リモコンからの赤外線コードを, 対応するVEHAコマンドに変換,家電制御システムに送ります. 一方,出力側では家電制御システムからVEHAコマンドを受け取り, それらを対応する赤外線コードに変換し,実際に家電を制御します.

本システムを利用することにより, たとえば以下のようなことが可能になります.

現在のシステムでは,ビデオ2機種,テレビ1機種の赤外線コントロールが可能になっています.

現在,これら以外の家電の制御に対応するために,学習機能(赤外線信号の記憶)を搭載したシステムの研究を 行っています.また,今後赤外線以外の制御方式へ対応していく予定です.

4.番組データベース登録システムに関する研究

本研究グループで開発している家電制御システムSIRECSは, テレビ・ビデオが制御対象機器の一部として含まれています. ビデオを利用する上で,テレビ番組の録画予約は, もっとも重要な機能の一つです.

SIRECSには,外部データベースの参照機能が実装されています. たとえば,外部データベースとしてテレビ番組の表を持たせておきます. SIRECSを利用して番組の録画予約をする人は, 番組データベースに登録された情報を元に, さまざなま方法で録画予約が可能になります.

などです. さらに,番組データベースを用意しておくことによって, 自分の好みの番組表を作成し利用することも可能になります. (自分好みの番組表という意味では, すでにいくつかのWWWサーバで提供されつつあります.)

本研究グループでは, 家電制御システムにおける外部データベース利用形態のひとつの例として, 番組データベースの自動登録システムを開発しています. 具体的には,インターネット上に存在するテレビ番組の WWWページから情報を取得し, それらをうまく統合・処理してデータベースシステムに登録しています. 家電制御システムからは,このデータベースを参照する形で 番組データにアクセスすることが可能です. 番組データとしては,一般的な新聞のテレビ欄に掲載されている情報 (開始時刻,番組名,主な出演者,G-コード)の他, 番組ジャンル,あらすじ,番組の寸評などが登録されます.

[番組データベースシステムの構成図]
図:番組データベース登録システムの構成図

将来的には,番組データベースだけでなく, 家電制御に関するさまざまなデータ (たとえば,CD,MD,DVDなどのタイトルリストや料理のレシピ集など) をデータベース化し,利用する技術について考えていきます.

5. 家電制御システムへのSet & play機能に関する研究

新たな家電を家電制御システムSIRECSの制御下に置く為には その家電の状態遷移をシュミレートする仮想家電の状態遷移データ等をシステム内に登録する必要があります.

本研究グループでは携帯電話のメール機能を用いることにより,できるだけ簡単な操作でSet & Playが可能なシステムを実現しました. 本システムはQRコードに必要な情報を載せておくことで,ユーザは簡単な入力と操作をするだけとなります. 携帯電話を用いる利点としては以下のようなものがあげられます.

[Set & Play機能を用いた家電制御システム構成図]
図:携帯電話を用いた仮想家電のSet & Play機能を持つ家電制御システムの構成図

上図が本システムの構成図です.本システムはQRコードから読み取った内容とユーザからの簡単な入力をメールで受け取るだけで, メールの内容を解析し,新たな家電の状態遷移データ等をSIRECSに登録します.

今後はメールによる登録の信頼性の向上や, 携帯電話以外の方法を用いたSet & Playについても考えていきます.

6.ユーザー認識機能を有する家電制御システムに関する研究

現在多くの家電は,家電を利用するユーザーや他の家電を認識する機能なく,それぞれ独立で動作しています.
このためネットワークを使った家電の遠隔操作では,複数ユーザ同士による家電操作の競合や家電同士の無駄な連携が発生して しまう可能性があると考えられます.

本研究グループでは,家電を利用しているユーザを把握し,SIRECSの持つ家電状態の認識機能と 連動して,家電利用における様々な問題を解消するシステムを実現しました. このシステムでは,ユーザ同士,家電同士,ユーザー・家電間にある「関係」に着目し,これらを システムが認識・考慮することにより家電のより安全で快適な家電制御を目指しています.

家電制御システムがユーザや家電の状態を認識する利点には,以下のようなものがあげられます.

[ユーザー認識機能を有する家電制御システム概要図]
図:ユーザー認識機能を有する家電制御システム概要図

現在登録された数人のユーザの認識がIDとパスワードにより可能で,上記で挙げたような制御が実際に 可能になっています.今後はユーザ認識の手法や関係の検討による,より快適な家電制御の考察と実現が課題です.

7.家電制御ユーザインターフェイスに関する研究ついて

本研究グループでは,SIRECSの研究と平行してSIRECSを用いて家電を操作する ユーザインターフェイスの研究を行っています. 家電を操作する便利なインターフェイスの実現を目標として, それぞれの研究ごとに異なったアプローチをしています.

ユーザインターフェイスとして,具体的に以下の6つのシステムが研究,開発されています.

  1. WWWブラウザによる家電制御インターフェイスの研究
  2. 携帯電話を用いた家電操作システムに関する研究
  3. 操作命令の組み合わせ定義および譲渡機能を有する携帯電話による家電制御システムに関する研究
  4. 電子メールを利用した録画予約システムの研究
  5. 音声を利用した家電操作システムの研究
  6. イベント認識型家電制御システムの研究

それぞれについての詳細は,以下をご覧ください.上記の項目からリンクをたどることもできます.

6-1. WWWブラウザによる家電制御インターフェイスの研究

近年では,パソコンが広く一般に普及し, WWWブラウザを用いたインターネットへの常時接続も一般的なものになっています. このようなWWWブラウザを家電制御デバイスとして利用することによる利点には, 以下のようなものがあげられるます.

本研究グループでは,これらの特徴を利用した WWWブラウザによる家電制御インターフェイスを開発しています. これは,JAVAサーブレットで実現されており, ハードウェアやOSに依存しないものになっています. 現在このインターフェイスからは,

が可能になっています. とくに録画予約機能については,日時を直接指定する方法だけでなく, VEHAコマンドによる外部データベース参照機能によって, 外部データベースにある番組表からテレビ番組情報を入手し, それを元に「番組表検索」「G-コード予約」が可能です.

[WWWブラウザによる家電制御インターフェイス]
図:WWWブラウザによる家電制御インターフェイス画面

現在,WWWブラウザから操作可能な家電は, 利用しているVEHAコマンドの制限等から,ビデオとテレビだけです. 今後,WWWブラウザに特化した家電操作のためのよりよいインターフェイスの設計や, 他の家電への対応などが課題です.

6-2. 携帯電話を用いた家電操作システムに関する研究および
6-3. 操作命令の組み合わせ定義および譲渡機能を有する携帯電話による
家電制御システムに関する研究

近年の携帯電話の普及には目を見張るものがあります. 一般に携帯電話は肌身離さず携帯しており, その利用可能範囲も通常の利用ではほとんど問題ないほど広域になっています. さらに,最近の携帯電話はインターネットへの接続機能を持ち, また,i-アプリをはじめとするJAVAプログラム実行環境も搭載されています.

このような携帯電話を家電制御デバイスとして利用することによる利点には, 以下のようなものがあげられるます.

本研究グループでは, これらの特徴を生かした携帯電話を用いた家電操作システムを開発しています. 具体的には,NTT DoCoMo の携帯電話端末で i-アプリ を利用した アプリケーションを作成し, サーバと通信することによって遠隔地からの家電制御を可能にしています. また,i-アプリを利用したことにより, ユーザが手元で容易に設定変更が可能になっています. 本システムの特徴は上記特徴のほかに以下のものがあげられます.

[携帯電話の画面例] [携帯電話エミュレータの画面例]
図:携帯電話インターフェイス 図:PC上の携帯電話エミュレータ画面

また,一般的に家電を使う場合,同じような操作を繰り返すことが多いと言えます (テレビをつけて,ビデオをつけてビデオを再生するetc). 携帯電話を用いて家電を遠隔操作する場合, 操作性の問題もあり,このような良く行う操作はできるだけ簡単に行えることが望ましいと言えます. そこで,これらの問題に対しての本システムのアプローチとして, ユーザ独自のコマンド(テレビの電源→ビデオの電源→ビデオ再生:一発再生コマンドetc) を作成することを考えています. さらに,ユーザの作成したコマンドに対して,より便利な利用方法を模索しています.

現在,本システムから可能な操作には,主に次のようなものがあります.

現在,携帯電話から操作可能な家電は, 利用しているVEHAコマンドの制限等から,ビデオとテレビだけです. 今後,携帯電話に特化した家電操作のためのよりよいインターフェイスの設計や, 他の家電への対応などが課題です.

6-4. 電子メールを利用した録画予約システムの研究

近年では,携帯やパソコンをはじめとして電子メールのやり取りが可能な機器が数多く登場しています. このような電子メールによる録画予約を実現することによる利点には, 以下のようなものがあげられます.

本研究グループでは, これらの特徴を生かした電子メールによる録画予約システムを開発しています. 具体的には,録画予約専用のメールアドレスを取得し, そのアドレスに対して録画予約情報を送信することで遠隔地からの録画予約を可能にしています. 本システムの特徴は上記特徴のほかに以下のものがあげられます.

日時の直接指定以外の方法として, SIRECSの外部情データベース参照機能により, 外部データベースにある番組表からテレビ番組情報を入手し, それを元に「番組表検索」「出演者検索」「内容検索」等が可能です.

[メールの内容]
図:電子メールによる予約情報の入力画面

現在,電子メールにより録画予約可能な家電は, 利用しているVEHAコマンドの制限等から,ビデオだけでDVDレコーダーなどには対応していません. 今後,電子メールに特化した録画予約のためのよりよい録画方法の提案や, 他の家電への対応などが課題です.

6-5. 音声を利用した家電操作システムの研究

家電を操作する方法として,上記(5-1〜5-4)の研究ではボタンを押す,メールを送る,といった ユーザが直接手で操作するインターフェイスを紹介しました. しかし,手が離せない場合や視覚に障害のある人がこのような操作をしようとした場合, それは非常に困難であることがあります.

本研究グループでは,直接手で家電を操作する以外の方法として, 音声による家電操作システムを開発しています. 音声を用いることによる特徴として以下のものが挙げられます.

本研究グループでは, これらの特徴を生かした音声による家電操作システムを開発しています. 具体的には,ユーザが発した音声を音声認識ソフトで認識し, その音声から家電を操作するためのVEHAコマンドを生成することで家電操作を可能にしています. 本システムの特徴は上記特徴のほかに以下のものがあげられます.

現在,音声入力により操作可能な家電は, 利用しているVEHAコマンドの制限等から,ビデオとテレビだけです. 今後,音声入力に特化した家電操作のためのよりよいインターフェイスの設計や, 他の家電への対応などが課題です.

6-6. イベント認識型家電制御システムの研究

一般的に,家電を操作する場合ユーザを取り巻く環境(時間,気温,家電の状況etc) の変化に応じて操作することが多々あります (暗くなったら電気を付ける,寒くなったら暖房をつけるetc). 既存の家電では,その家電の持つ機能しか利用できないため, ユーザ自身がその環境の変化を認識し家電を操作するかどうかの判断をしています (例えば,暗くなったら電気を付けようとする場合, 明るさセンサーの付いた照明でないとそのような操作はできません). このようなユーザを取り巻く環境に応じた家電操作を自動的に行うことによる利点には, 以下のようなものがあげられます.

本研究グループでは,上記のような操作を自動的に行えるシステムを研究しています. 具体的には,センサーなどから取得した環境情報の変化に応じて VEHAコマンドを生成,SIRECSへ送信することによって実現しています. また,このような家電の操作方法を記述するための言語(家電利用ポリシー)を定義しているため, ユーザは家電利用ポリシーの記述方法を覚えておくだけで, 全ての家電が同じ操作方法で操作可能になっています ("7時にテレビ,エアコンを電源ON"と書けばテレビとエアコンにそれぞれ 違った操作方法でタイマーをセットすることなく7時に電源をつけることができます). 現在このインターフェイスからは,

が可能になっています. とくに時刻の指定については,直接日時を指定する絶対時刻指定のほかに, ある操作の何分後,ある操作から何分間隔といった相対的な時刻指定が可能です.

また,家電利用ポリシーとしては, 時間指定のほかに家電の種類や設置場所により操作する家電を指定することが可能です (リビングの家電を電源ON,テレビを電源OFFetc).

[イベント認識型家電制御システムのインターフェイス画面]
図:イベント認識型家電制御システムのインターフェイス画面

現在,イベント認識型家電制御システムから操作可能な家電は, 利用しているVEHAコマンドの制限等から,ビデオとテレビだけです. また,環境として記述可能なものは現時点でシステムが情報収集可能なセンサーの制限から時間だけです. 今後,イベント認識型家電制御システムに特化した家電操作のためのよりよいインターフェイスの設計や, 他の家電への対応や, 気温や明るさ,人の位置などの時間以外の環境を家電利用ポリシーとして記述可能とすることなどが課題です.

研究成果
研究会
国内ワークショップ
全国大会・支部連合大会
受賞等
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